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リアルおもちゃドクターの世界「仙台おもちゃ病院エコ」

2019/05/31

新緑が瑞々しい青葉山の東北大学キャンパス内にある、せんだい環境学習館:たまきさんサロン。

5/12(日)、そこで定期“開院”している、「仙台おもちゃ病院エコ」にお邪魔して参りました。

読んで字のごとくこれは“おもちゃドクター”達が、壊れたおもちゃをその場で診察して治療(修理)をしてくれるボランティア活動です。


この日“おもちゃドクター”は7名体制。
人間が通う病院の様におもちゃの所有者の方の受付・問診からスタートします。受付開始時間の13:30から夕方までの間、おもちゃを持ったご家族連れの姿が途切れることはありませんでした。


一口に「おもちゃ」と言っても、乳児用の天井でぐるぐる回るメリーから、ミニカー・お人形・動くぬいぐるみ・手押し車・乗る車・お人形さんの家やままごと用の
台所・オルゴール・・・などなど幅広い。


人気キャラクターのしゃべるぬいぐるみ。”中身を取り出す”場面は、お子さんにとって衝撃映像なので、見えないところで行うようにすることも。


最近ではおもちゃとは言い難いくらい高性能なラジコンカーやヘリコプターなど、多種多様なものが「おもちゃ」として持ち込まれます。ちなみに使用者が大人の場合でも問題なく診てくれます。

「仙台おもちゃ病院エコ」のドクター達が、とにかくすごいのは、確かな診察の目、技術力の高さ!!そして、お子さんを不安にさせない工夫や対応力!!!


自分の大切なおもちゃを扱うドクターの手元を心配そうに見守るお子さんの目の前で、そのほとんどを治してしまう。そしてその修復率はなんと90%!!。どんなに
お子さんやその家族が笑顔になるかは想像にたやすい。恐らく、想像以上。



ドクターの皆さんは、そもそもメカ好きの方、元電機系やものづくりのお仕事をされていた方々ですが、なにが来るかは分からないおもちゃの数々、もちろん初見。そこから原因を探り、治療にあたります。


ドクター同士がカンファレンス行う場面も頻繁。ちゃんと外科、内科、神経(回路など)内科、整形外科など専門もある。

写真はもはや手術にしか見えない。


持ち込まれるおもちゃは、とうの昔に箱や取扱い説明書も無くなっている状況がほとんど。特に年代物には当時の技術や構造なども含めて、経験値と想像力をフル動員しながら、試行錯誤のことも多々。

なので、各ドクターが対応した個別経験を共有したり、新しい技術に対する勉強会も行っているそう。ほぼその日の内に治療が施され、おもちゃと一緒に家に帰ることが出来ますが、中には重症なおもちゃももちろん存在します。あらたな部品購入・交換が必要な場合や、さらに詳しく診断を要する場合は“入院”することになります。


 

この日、退院となったおもちゃのお迎えに来たAさん(女性の方)にお話しを伺いました。

患者さんは「白いワンちゃん(写真下)」電池内蔵の歩くおもちゃで、首を振りながら吠えたり、止まって甘えるような鳴き声を出したりします。


このワンちゃん、なんと!36年前のもの。
Aさんのお父さまが、お孫さんがまだAさんのお腹にいる時から用意してくれたもの・・・。残念なことにお父さまはお孫さんが誕生する前に他界されてしまいました。

その後、お孫さんはこのワンちゃんと遊びますが、ある時、動かなくなってしまい、それから随分と長い間、大切に保管されました。
今回、市の広報誌でAさんがおもちゃ病院エコの存在を知り、ワンちゃんが治ったら今度はご自分のお孫さんに譲りたいと思ったそうです。3代続くおもちゃです。


こちらは担当ドクター談。

ワンちゃんの治療は随分と苦心したそうです。
どんなアプローチをしても反応がない場合、色々試すことしか方法はなく・・・
夜中に突然「こうしたらどうだろう?」と思いつくこともしばしば。
今回のワンちゃんの回路は「温めたり、冷やしたり」の荒治療もしたそうです。

動き出したワンちゃんに目を細めながら・・・

Aさん「こんなに芸をするんですね?」

ドクター「いや、正解が分からない(笑)」

なんて会話をしてました。



市販のおもちゃの保証期限は数か月。

おもちゃに限らず、量産品は保証期間を過ぎると「廃番品につき部品がありません」「新しく購入された方が早いですよ」と言われる。そう言われると、「そうかな~」と変に納得して新しいものを買ってしまう。

しかし、おもちゃには他の家電等とは違い、それを与えた家族の思いや兄弟や友達と遊んだ記憶、おもちゃがあるという風景も含めた“思い出”がもれなく宿っている。こればかりは替えが存在しない。

 

だから、これは“単なる修理”の場ではないと感じる。

壊れたけど、捨てることが出来ずに“モノ”として保管されていたおもちゃの止まった時間が再び動き出し、それに紐づけられた記憶が色鮮やかに蘇る瞬間に立ち会える貴重な場。

そして、治してくれたドクターに感謝を示し、その経験と知識、技術を敬い、再び息を吹き返したおもちゃを大事にする精神を育てる場だと思う。

おもちゃ病院での診察や修理は、基本的に無料です。

紛失した部品、欠けてしまった部位などは、できうる限り、ドクター達が日頃から使えそうな部品や素材を各自収集されているものから融通しあったりして対応するそう。

それでも、部品の交換などがやむを得ない時はきちんと説明の上、実費負担が発生します。

最近はテレビや広報誌など地元メディアにも取り上げられることも多く、定期開院している会場はどこもいっぱいのようで、持ち込みは一家族につき2個までとしているようです。

廃棄物は「不要になり廃棄の対象となった物(無価物)」と定義されるが、ドクター達は見事なまでに”有価物”へと変化させる。

大量生産、大量消費の時代、壊れても「捨てる」ではなく「直す」という選択肢があることをこれだけ実感できる場は少ないのではないかと思う。

環境教育のために!なんて言うのも堅苦しいので・・・治ってほしいおもちゃがある皆さんは、ドクター達の“職人技”を目の前で見てほしい。

大人も子供も笑顔になれる「仙台おもちゃ病院エコ」には、是非、ご家族皆さんでお出かけ下さい。

 

仙台おもちゃ病院エコは仙台市内の7箇所で定期的に開院しています。

診察希望の方は最新情報を確認してからお出かけ下さい。

 仙台おもちゃ病院エコ

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