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岩手県八幡平 ~続くもの、始まったもの、終わったもの~

2021/08/01

岩手県八幡平の自然散策の記事を二つ掲載したところで番外編を。

今回の八幡平行きは、古いものや新しいものに出会う旅でもありました。

天空の秘湯「蒸ノ湯(ふけのゆ)温泉」

秘湯と呼ぶに相応しいロケーション。八幡平最古の温泉で400年も湧き続ける効能豊かな源泉。

露天風呂や野天風呂など多様な風呂場が用意されており、高い標高の屋外ならでは!の絶景と堪能できます。

なんというか、大らかな土地柄で・・・

野天風呂は、もちろんお風呂なので写真撮影を遠慮しましたが、道路際から眺めると、もくもくと煙を上げて棚田のように連なっていました。


八幡平アスピーテラインの途中には、2019年に稼働開始となった「松尾八幡平地熱発電所」 が道路脇にあり、ひときわ高く大きな蒸気が噴出していました。

独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の助成金制度、出資制度などを活用。

発電端出力(発電機の出力)が、7,000kWを超える規模の地熱発電所は国内では22年ぶりの新規稼働で年間発電量は、一般家庭約1500世帯分の消費電力に相当するそう。


発電基地の建屋の外壁の色を調和させて統一感を図り、発電基地の地表面を道路より低くすることで、往来する人々に違和感や圧迫感を与えないようにするなど、環境アセスメントでいうところの”景観”にも配慮したとあります。

発電施設全体をコンパクトに、そして発電効率を向上するために新しい技術が導入されていて、発電基地が生産基地から約1km離れていることから圧力を損失しないよう蒸気と熱水を別々のパイプラインで輸送しているとのこと。


そして、ひときわ印象的な場所だったのが、こちら(下の写真)

「旧松尾鉱山緑丘団地跡」


明治15年に発見された松尾鉱山は、大正末頃には国内需要の約半分を生産する一大硫黄鉱山に成長。

ここは、かつて”東洋一の硫黄鉱山”と呼ばれていました。


積雪の厳しい地域でありながらも鉱業と日用品などの物資輸送のため、専用の鉄道会社が設立されると・・・

住宅・病院・売店・学校・郵便局・銀行・娯楽施設等が建てられ、最盛期は従業員とその家族、約13,000人が生活していました。

そこには、セントラルヒーティングや水洗トイレ完備の鉄筋コンクリートによる集合住宅等々、その時代の最高水準の生活環境が整い、”雲上の楽園”として、麓の人は松尾鉱山へ買い物や映画、演芸を観に行くことが楽しみだったとか。


しかし、歴史に残る「鉱毒事件」という負の一面も。

大正後期に鉱山から流出する強硫酸水が北上川を汚濁する鉱毒水問題が表面化。

大きな社会問題となり、鉱山は中間処理施設の整備と巨額の賠償金を支払い続け、また、硫黄の新たな入手方法に取って代わられ、ついに昭和44年には従業員全員解雇、事実上の閉山。

現在も鉱毒水の流出は続き、中和処理施設で処理が続けられているそうです。

山奥深いこの地は、人々が憧れ、活気に満ちる一大都市として栄えた時代を経て、今はひっそりと時を留めたまま、緑が覆うに任せている姿となっています。


旧松尾鉱山緑丘団地跡にほど近い場所に、広くて手入れが行き届いた広場がありました。

記念碑のようなものが見えたので近づくと・・・ここに学習院八幡平校があったのですね!

松尾鉱山の病院だった建物を譲り受け、校外学習、運動部や文化部の合宿やスキー宿として利用された立派な施設があったようで、在学中の皇族の方々をはじめ多くの人々が訪れていたとのこと。

老朽化による維持管理の問題もあり、平成13年に閉校、今は記念公園になっています。


古くから尽きることなく湧く温泉は人間を癒し

地球が抱く熱は科学技術によって生活に欠かせない電気を生み

長い年月をかけた地球活動によって露頭した鉱物は、この地に楽園と称されるほどの豊かさをもたらし、そして、環境問題や時代の波にのまれ、その価値を変えてしまいました。

すべて自然の力、人間にとっては恩恵とよばれるものですが扱いを間違えてしまうと、長く長くその代償、もしかしたら償い切れない事態を招く・・・

人間の叡智は自然との共生のために磨かれなければならないということ。

「旧松尾鉱山緑丘団地跡」を後に帰路につくと、一編の物語を読了したような・・・切ないような、悲しみとも寂しさとも言い難い気持ちになりました。

これが感傷というものでしょうか。

 

「旧松尾鉱山緑丘団地跡」は道路から見ることができるものの、敷地及び建物内は現在、立ち入り禁止となっております。

廃墟スポットとして人気があるとのことですが、安全確保のための管理はされていないので、くれぐれも建物内に入ることは控えて下さいね。

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