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有限会社ササキ設計 ~森・人・文化の有機的なつながり~

2021/10/01

東北ボーリングさんの立木見学会の後

現地案内役の森林組合の方々と別れて、一行は北上川河口方面、そしてリアス式海岸沿いを北へ走行。


”落ちそうで落ちない”巨石が御神体である『釣石神社』

幾多の震災に見舞われてもビクともしないその姿から、多くの受験生が合格祈願に訪れるということでも有名。

その釣石神社や「石巻・川のビジターセンター」、ディキャンプなどが楽しめる多目的公園「白浜ビーチパーク」と美しい砂浜が続く「白浜海水浴場」も通過した地点で一旦、停車。


ここは展望台と公園があり、石巻市十三浜(その名の通り、相川浜、追波浜、小滝浜、小泊浜、大指浜、小指浜、白浜、立神浜、月浜、長塩屋浜、大室浜、小室浜、吉浜)地区において東日本大震災の犠牲となられた方々の慰霊碑がありました。


さて!!

次の目的地は、東北ボーリングさんの新社屋の設計を担当されている有限会社ササキ設計さんからのお誘いで、北上町十三浜小指にある本社事務所へお邪魔することになりました。

有限会社ササキ設計


相川トンネルを超えてすぐを(遮音壁が途切れたところ)ほぼ鋭角に曲がると・・・

大きな屋根、大らかな構えの木造事務所社屋があります。


かの震災で、この地区を襲った津波は、上の写真のトンネル構造物から、さらに1.5m上までに達し、当時、27軒あった建物のうち、13軒が消失。

その時、ササキ設計さんの社屋は、(現在もある)1階部分のコンクリート基礎から上部の建物部分が剝がされて、船のように浮かび上がり、流されていったそうです。

想像を絶するその威力、破壊力に言葉を失います。

幾多の津波による被災の歴史を持つこの地区。

古くからお住いの方々は地震直後、速やかに高台に避難したとのことですが、佐々木さんご家族が無事で本当に良かった。


事務所内に入ると、梁や柱に無垢材が組み巡らされ、天井の明り取りの窓からは自然光が漏れるホッと人心地がつく空間。

ササキ設計さんがお得意としているのは木造注文住宅。

また、日本の住文化と職人の技術の粋が詰まった古民家、その趣をそのままに生活様式の変化に対応した再生やリノベーションにも力を入れていらっしゃるとのこと。


玄関から、外靴のまま入れる広い三和土には、大きなテーブルが設置されていて、そこでお茶の時間となりました。

テーブルの上には、東北ボーリングさんの新社屋模型が置いてあり、夢が膨らむ、楽しい時間です。


大人数でお邪魔したので、椅子に座れなかった人はというと・・・

窓際と壁に沿ってベンチが設えてあります!

この動線の良さ、機能性、座り心地があまりにも良くて、絶賛すると

何と新社屋の設計にも取り入れてあるとのこと!!

(思わず「座りに行きます」と発言したら、皆さん笑顔で、どうぞ!と言って下さりました)


そして、ベンチに腰かけた位置から、真っ先に私の目を奪ったのは、事務所の奥の方に鎮座する”階段箪笥”

お仕事柄、古民家の解体にも関わるそうで、県内の古い家屋から譲り受けたものが、ここでは現役、大活躍中。

その他、飴色に艶めく欄間や杉板の引き戸などの建具もパーティション代わりに活用されています。


基本的に吹き抜け構造になっているのですが、スペースが必要であれば板を張っていけばよいという明解な考え。なるほどですね~


そうそう、一階には薪ストーブがありました。

背面の材質は、ここは石巻、やはり雄勝の黒色硬質粘板岩である「雄勝石(玄昌石)」のスレート材!

その昔、全国の大名が憧れたという「熊野の筆」「鈴鹿の墨」そして「雄勝の硯」は、いわば文房具の”三種の神器”

かの伊達政宗公も献上された雄勝産の硯を生涯愛用したそうで、それはそれは重厚で立派なものでした。

この事務所は、誇るべき地域資源の見本市ですね。


ササキ設計さんの手掛ける住宅は、屋根と壁は二重構造になっており、真冬でも薪ストーブ1台で家中を暖めてくれます。

木が持つ柔らかさやぬくもりが人の心地良さを保ち、調湿性は冬暖かく夏も過ごしやすい室内を実現するのですね。


薪ストーブで使う薪の調達は公共工事などの際に切り出された木を”取りに行く”という条件さえクリアすれば無料でもらえる機会があるそうです。

ササキ設計さんが提案する住宅は快適な居住空間にともない、住まう人の心身健康や愛着を生む手間を加えることで、循環型のライフスタイルを生み出す工夫がいっぱい。

これらは人々が豊かに人生を送るだけではなくて、個人ができる環境問題の解決と地域の風土や歴史、そして、日本が脈々と繋いできた優れた木造技術の伝承にも貢献できるということですね。

ササキ設計さんは、地産地消の家づくりを実践する専門家のみなさんを繋げ、品質や工期の安定、適正な価格の維持に努めることや

今回のような森林や製材所の見学会で学び、山と地域の健康と共生についての啓もう活動を積極的に行っています。

杜の家づくりネットワーク

 

ここ津波の被災エリアは居住不可の地区になり、ご近所さんは高台に移転されていますが、事務所ならば再建可能だったので、佐々木社長は元の場所に事務所を再び構えました。

建物と設計した方って似てると思います。

一言で言うならば、外見は柔和なのに、思いが深く、驚くほど芯が強い。

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