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山形県庄内地方紀行 ~”清川だし”の風の里と秘湯肘折~

2021/10/24

庄内平野の”どデカさ”は鳥海山から十分、いや十二分に分かったと思ったけれど、平地を走れば、なお、それは体感するというもの。

海沿いに林立する風車の光景は、普段、見慣れない私には珍しい眺め。

でも、今、車窓に映る山形県庄内町(旧立川町)のウインドファームは、のどかな田園や後方の丘陵地帯に大小の風車が常にクルクルと回っていて、また別の趣を感じます。


はじめて知ったのですが、特有の地形が生む”局地風”にも2種類あって

「おろし」山から吹きおろす強風 (六甲おろし、赤城おろしなど)

「だし」陸から海に向かって吹く風(船出に適するという由来の名称)

ここ庄内町清川付近で吹く夏の局地風は「清川だし」と言われており、「やまじ風」愛媛県東部、「広戸(ひろと)風」岡山県津山盆地の強風と合わせて、”日本三大局地風”と称されるとのこと。

「清川だし」は古来、農作物用に甚大な影響を与え、冬には日本海からの地吹雪、時には大火事をも巻き起こしたそうで、地域の過疎化が進む事態も・・・

ならば、この風を逆手にとり「風で町おこしを!」という号令のもと、昭和後期に最初の風車を建造し農業に使う実験を開始。

その後、風エネルギー実用化実験事業や風力発電の実験事業の受け入れなどを行い「風車の町・風力発電発祥の町」と呼ばれるまでになったそうです。

 

さて、長大な最上川に沿うように更に内陸へ向かい、山形県のほぼ真ん中に位置する山間の秘湯、開湯1200年を誇る大蔵村の肘折温泉郷へ。


山を登り切った地点から谷底へ急降下をするような地形で、そこには、肘折地区に向かうための『肘折希望(のぞみ)大橋』がありました。

平成24年の春、大規模な地すべりが発災、肘折から他地区へ出るための路線が通行不能になり、応急の復旧工事を経て、翌年に完成・供用となるまで、異例のスピードで工事が進められました。


採用された工法の”鋼製ラーメン”桟道橋は山間部の狭小な道路工事に適しており、工期の短縮が見込めるため、地形や植生に影響が少なく環境保全にも有効。

しかし、”インパクト大”の見た目も、上り下りの感覚も、ジェットコースターのようでした。


いかにも”湯治場・温泉街”といった風情、旅館が所せましと軒を連ねる通り。

散策していると建物の角から車がひょっこり。

一台がやっと通れるくらいの幅の道路が建物の前後に張り巡らされていました。


旧肘折郵便局 「局便郵折肘」と看板の文字読みが右から!

赤い屋根、ブラウンの壁面に白い窓枠が、愛らしくて洒落た雰囲気です。


積雪量4mを記録したほど、全国屈指の豪雪地帯(「ドカ雪・大雪川柳コンテスト」なるものが開催されてます)

個人住宅も含めて、ほとんどの建物が雪が積もったら片方だけに落ちるよう ”片流れ屋根”をのせています。


肘折地区を流れる”銅山川”には、『山形県河川アダプト導入モデル事業※現在は「山形県ふるさとの川愛護活動支援事業」』との掲示板が。

”アダプト”とは「養子縁組」を意味しているそうで、行政と地域がパートナーとなり、住民や企業が「里親」、河川を「養子」と役割を定め、清掃・植栽などの美化活動や啓発活動などを定期的に行う事業。

養子縁組とは・・・面白い表現です!


さらに上流へ向かうと・・・『肘折砂防えん堤』(通称:肘折ダム)

月山などから流れる銅山川の災害から、肘折温泉街を守るために昭和27年に竣工。

建設において、セメント以外は現地調達、”石工”も含めて地元の人力で施工された土木建造物の登録有形文化財に指定されているんですね。

「肘折温泉源泉公園」として整備されていて、足湯などが楽しめます。


ここから真向いに目を上げると、水力発電所らしきものが。

「肘折発電所」は、昭和45年運転開始という歴史を持ち、ここからさらに上流約2kmにある石抱(砂防)ダムから取水する水路式発電所。

動力は水車発電機で、最大6立方メートル/sの水を使用、落差は65m。

令和に入り機器の更新によって発電量が増加、現在、3,400kWの電気を生み出しているそうです。


鳥海山からの眺めに始まり、まったく予期せずに、庄内エリアの再生可能エネルギー施設を巡る旅の様相を呈してきました。

全国9位の面積を有する山形県は特色豊かな4つの地方に分かれるほどで

険しく複雑な山々の地形やなだらかに続く海岸線がもたらす豊かな自然資源は代えがたく素晴らしい恩恵。

一方、肘折地区は、昨年夏の豪雨災害により、崖崩れなどの甚大な被害を受け、今でも復旧工事のため、一部区間道路の迂回がありました。

冬季、夏季の厳しい気候や自然災害に立ち向かいながらも、自然と人との共生のために再生可能エネルギーの積極的な導入と防災・環境保全に即した施設の整備事業など・・・

実は、そのどれもが押し並べて歴史が長いということが分かりました。

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