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栗駒山 ~地球の鼓動と山間の震災遺構~

2021/11/08

”神様の絨毯”と称される、日本一の紅葉との声もある、東北の名峰『栗駒山』

出かけたのは紅葉ハイシーズン入り口の時期で、翌週には駐車場の混雑についてニュースが流れていたっけ・・・

宮城県栗原市からの定番コースは真夜中に到着しても混雑が避けられないかもしれないとの情報を受けて、初の栗駒山は岩手県側からのアプローチとなりました。

奥羽山脈のほぼ中央に位置する栗駒山は、宮城県(栗原市)、秋田県(東成瀬村)、岩手県(一関市)にまたがっており、移動中、目まぐるしく県境の看板が入れ替わります。

さて・・・早朝の「須川高原温泉」のある登山口の駐車場は、まったく視界が悪く、気象情報に聞き入りながら、登山の準備を進めたり、早々に断念して温泉施設が開く時間を待つ人や、車を旋回させる方の姿もありました。

せっかくここまで来たのだから、行けるところまで行ってみようと、出発!


豊富な登山ルートを持つ栗駒山。

須川コースの特色として、”地球の鼓動を感じる火山地形”とありますが、登り始めから登山道のあちこちに”もくもく”と温かい水蒸気が吹き上がり、硫黄の匂いが立ち込めています。

登山口の近くには「おいらん風呂」という天然の蒸気風呂の小屋もありました。


稜線歩きが楽しいと評判のこのコース。

やはり見どころと言えば、高山植物など自然観察のための散策路がある「名残が原」でしょうか?

よく写真などが紹介されている景色ですが、相変わらずの視界で、全容が分からないのはちょっと残念・・・。


近年、高濃度の火山ガスが検出されているため、いくつかある須川登山ルートの中で地獄谷や昭和湖を辿るルートは通行止めになっている模様。


”三途の川”を渡り、”産沼”に到着。・・・ここから山頂は1時間。うーん・・・

天気の回復を期待できない時間帯。ここで泣く泣く折り返し下山することを決定。


”名残が原”に戻った時点で、雲の切れ間が見えてきました!

少しづつ紅葉の様子が分かるようになってきて、何度か足が止まります。


堰を切ったように、散策路にどんどんやってくる人々とすれ違いながら、登山口まで戻ってくると・・・

朝の視界の悪さで、全体像が見えなかった須川高原温泉の景色が見通せるようになっていました。


須川高原温泉

栗駒山が抱く湯治場として知られ、江戸時代から300年続く、みちのくの秘湯。

濃霧ではない、もうもうと立ち込める湯煙に、思わず駆け寄ってしまいます。


須川温泉の源泉が、すぐそこに!!

摂氏48~52度の湯が毎分6,000L湧出しており、1,000mを超える標高の山地としては全国屈指の湧出量を誇るとのこと。


それにしても、神秘的な色。

深緑~浅く流れているところでは翡翠色にも見えるこの源泉は「緑礬(りょくばん)泉」というそうで、鉄を含んでいる強酸性の泉質。


源泉と湯畑が大迫力!!

赤い鳥居の向こうに少しだけ見える石の祠は「須川温泉神社」

 

さて、少し後ろ髪が引かれる思いもあるものの・・・

栗駒山の”さわり”だけでも堪能できたので、気を取り直し、岩手県一関市へ向かいます!

 

2008年6月14日朝、岩手県と宮城県の県境を震源とするM7.2の地震が発生。

岩手県奥州市と宮城県栗原市で震度6強を記録した「岩手・宮城内陸地震」です。

この逆断層型の直下地震は、震源地付近に大規模な地すべり(山体崩落)をおこし、河道への土砂流出、道路の埋没、落橋など甚大な被害をもたらしました。

ここ岩手県一関市厳美町には、「祭畤(まつるべ)大橋(落橋)展望の丘」があります。


「岩手・宮城内陸地震」における災害の教訓を後世に残すために整備された公園。

それにしても、こんなに大きな建造物を曲げたり、歪ませる威力とは、凄まじいとしか言いようがありません。

展望地と対面に臨む木道では、折れて落下した祭畤大橋と道路が、震災当時のままの状態で間近に見ることが可能です。


道路などインフラの復旧工事とともに、地すべりによる斜面の崩落では、大量の倒木が発生したため、周辺の自然環境の回復を図るため、倒木はチップ化され、植生基材として活用する取り組みも行われたそう。

 

東日本大震災以降、沿岸部の各地に整備が進んだ津波の脅威を伝えるため震災遺構や伝承館を訪れる機会は多々ありました。

今回、山間の”震災遺構”に、初めて来た訳で・・・

山や海が近い日本において、地震に起因する災害の形はずいぶん異なっておりますが、到底抗えない規模や威力であることは明らかです。

ここ最近、全国的に頻発している地震。

私達が立っている地球が”生きている”ことを、あらためて認識し、まずは自助努力について考えてみたいと思います。

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