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【開催レポート】よみがえる仙台城大手門の金具たち ー速報「梅津幸次郎コレクション」の再発見ー
2024/09/17
2024年7月20日(土)~8月25日(日) 仙臺緑彩館で開催された展示(と関連イベント)
「よみがえる仙台城大手門の金具たち ー速報「梅津幸次郎コレクション」の再発見ー」
(下記、イベントの開催チラシより)————————
2023年秋、仙台市内の民家から3箱、16点の金具を発見。
箱の一つには、1945年7月10日の仙台空襲で焼失した、旧国宝・仙台城大手門の金具であることが記されていました。
現存する記録との照合により、これらの全てが、実際に仙台城大手門に使われていたものだと判明したのです。
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展示会の企画が本格始動した頃、打合せのため、はじめて足を踏み入れた仙臺緑彩館。
昨年(2023年)春のオープンから「第40回全国都市緑化仙台フェア(未来の杜せんだい2023)」メイン会場を皮切りに、世界中からファンが押し寄せたポケモンのイベント等々、大規模イベントも受け入れた施設です。
その後、何度か訪れましたが、曜日、時間帯などによって、実に様々な人々が行き交う場所という印象。
観光、修学旅行の一団はもちろん、午前の早い時間はジョギングの途中に立ち寄る方、公園、お散歩ついでにランチを楽しむお子さん連れのママ友やご家族など。
さて・・・展示会と聞いた時から、勝手に博物館の”ものものしい”展示風景を想像していたのですが、ホール奥から連なるこのテーブルの”流線形”を生かした展示にする!と聞いて驚きました。
今後、益々、その価値が高まることが分かっている展示品の数々を、こんなに至近距離で見る機会・・・もう最後かもしれない。恐らく、そう。
展示監修は、東北大学災害科学国際研究所の准教授 佐藤大介先生。
このイベントの企画をされた仙臺緑彩館の運営管理を行っている青葉山エリアマネジメントの豊嶋さんと、展示レイアウトや掲示物、キャプションの確認などを行います。
さぁ、いよいよ明日が初日!展示物の設置作業がはじまりました。
仙台城大手門の”釘隠し”、実物を見ると仙台藩にふさわしい大手門の威容が偲ばれる重厚さ、緻密な彫刻と意匠に華やかで由緒を感じる一級品であることが分かります。
戦火の激しさを物語る焼けただれた姿。
仙台空襲の夜、仙台上空が赤く染まる様子を遠く県南から見たという話を私は祖母や母から聞いたことがあります。
地震も警戒しなくては!この頃、全国的に多発傾向であったため、特に念入りに固定してもらいます。
今回の会場となった仙臺緑彩館は、仙台城があった青葉山の”お膝元”に位置します。
館内の「ライブラリースペース」は、仙台城の資料、古地図が常設展示されており、仙台・追廻地区の歴史とその関連書籍は、その場で読むこともできます。
仙台城大手門金具に関するイベントの開催に合わせて、仙台市文化財課さんが大手門の遺跡調査による出土品の展示したり、連携企画の取組みもありました。
展示のはじまりは、仙台河原町の梅津家のこと、郷土史料の蒐集家として有名であった幸次郎さんのことを紹介するゾーン。
なんと有志で自費出版したという貴重な本もあり、これは佐藤大介先生が所有しているもの。
面白かったのは、当時の県内版”長者番付”。
(上の写真)これは梅津さんのお宅からお借りした火鉢なのですが・・・
幸次郎さんがご存命の頃、梅津家に東北大学の学者やいわゆる地元の名士などが集まり賑やかであったそうです。
多数の大人達でこの火鉢を囲んでいたというご家族の記憶にもとづく展示。
そして、発見された大手門の金具たちは、一番奥に控えています。
展示台に据えられ、照明の位置、角度を変えてみると、物静かなのに。。。ぐんと雄弁になる感じ。
準備の最中も取材対応がありました。
昨年の発見以降、テレビ各局で報道がありましたが、この日は”展示会がはじまる”というタイミングでの取材。
後日、アンケートの回答からも反響が大きかったことが分かりました。
今回の発見のきっかけとなった民家への調査に同行した東北大学の学生さん達にもお目にかかれました。
つまり、「第一発見者」になったという、なかなかない経験ですね。
そして、会期中、数回行われた古文書アーカイブ作業のデモンストレーション(といっても佐藤先生は通常業務中)
一時お預かりした民家に眠っていた史料を一枚一枚写真に残していきます。
現在でいうところの”メモ帳”には、市中の「警ら隊」的な役割の方が、日々、見聞きした出来事を書き残しております。
携帯に便利な小さめの帳面が、びっしりと筆書きによって埋め尽くされている様は、当時の人々の普段の営みや息づかいを感じます。
市井の人々、諸国を回る商人などの日記、手記の内容から、大きな災害の情報や歴史的な事件の様子が分かることもあるそうです。
人一人の生涯の記録。
とてつもない情報量に溺れそうになりながら読み解いていく地道な作業。
時に調査の中で、今回の様な大発見に繋がることがあるから歴史という分野は未知数。
展示の隣でコツコツと作業をする佐藤先生の姿に足を止め、のぞき込んでくる、他県からやってきた観光客の方、修学旅行生や引率の先生、県内、市内にお住まいの方。
そういった方々には、丁寧に説明したり、撮影体験をすすめたりします。
そして、8月3日(土)の午後に開催された『仙臺歴塾 トークイベント「個人コレクションと歴史まちづくり」』の一場面。
佐藤先生は講演で登壇され、展示品の発見の経緯や今後の展望をお話しされました。
経緯では、地震、水害など大規模な災害(人災も含む)が繰り返し襲うこの国において、被災史料をレスキューする活動、平時は寄せられる情報をもとに調査を行い事前に記録保存とアーカイブすることの重要性をお話しされていました。
1人でも多くの市民に保全活動を知ってもらい参加してもらうこと。
郷土の歴史を繋いでいくために、誰でも参加できる活動がここにあります。
来場アンケートには、仙台城大手門再建に向けた動きに期待しているという声も散見されました。
実物があるということは、とても有力なことで科学的な分析も可能になります。
今回の発見は報道や実物展示、トークイベントなどを通して、広く多くのことを発信する機会となりました。
民家に眠る史料の存在、それを対象とした調査・保全に関する研究分野のこと、市民が関わることができる保全活動のこと。
展示品とそれを見る人の距離の話ではなくて・・・
大学や学者の世界だけのものかと思っていた歴史や史料のことを、グンと身近に感じることができたのではないかと思います。