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『ブリリアント・ミネラル』in 青森県八戸市美術館

2024/12/25


11月に青森県八戸市で開催された市民向け講座『ブリリアント・ミネラル』

この講座は、八戸市委託「令和6年度大学資産を活用したアートの学び事業」として八戸学院地域連携研究センターが主催しています。

市内にある八戸学院大学、八戸学院大学短期大学部、八戸高専、八戸工業大学と連携した「創作体験ワークショップ」は、誰もが気軽に 訪れることができる美術館を考えることを目的に、美術とは異なる分野の教員を講師とするワークショップを開催するというもの。

さて、今回の講師は八戸工業高等専門学校の土屋範芳校長。

運営サポートのため出張される東北大学大学院環境科学研究科の平野伸夫先生に同行させていただき、見学(と少しお手伝い)に行って参りました。


会場の青森県八戸市美術館 「アートのまちづくり」の中核施設として2021年にリニューアルオープンした美術館。

この好立地、アクセス抜群の”場”で、様々なワークショップ講座が開催され、市民の皆さんに学びと人の交流を生み出す役割を担っています。


八戸美術館を特徴づけているこの部屋(空間)は、その名もズバリ!「ジャイアントルーム」

天井がすごく高い、端から端までとても広い、表現としてはそうなのですが・・・

なんというか体育館にいる感じ。(でも、ここ美術館だよね!と自問自答の繰り返し)

その巨大な空間の中、ぽっかりと黒い口を開けているような部屋が今回の会場。


講座のキーワードは”ロック、ミネラル、光の不思議、アート!”

アートを謳う講座ゆえ、石を観察するという行為が当たり前の研究者としては、参加者がどう捉えてくれるのか?疑問がある模様。

しかしながら、サンプルの薄片標本を壁一面に大きく投影して見てみれば、

”額縁に収められた絵画”と言ってもいいかもしれない。

そろそろ参加者のみなさんがお越しになる時間。

受付名簿には単独参加、親子での参加、年齢層は10~50代までと幅が広く驚きました。


開始時間となり、気がつけば満席・・・

どころか、材料や道具の関係で、事前申込み以外の方にお願いして1セットに2~3名で着座、共同作業をしていただくことに。

まず、土屋先生から自己紹介と作業前のレクチャー(光の複屈折など)がありました。


作業ゴールは「石の中の世界をのぞいてみる」こと。

東北大学の平野先生が用意した2種類のプレート(薄く割った石がついている)、これを今から自分の手で薄く、しかも均等に研磨していき「薄片標本」を作っていきます。


鉄板の上の研磨剤を水で溶き準備をすすめます。


研磨に適した固さ、とろみなど”あんばい”があるようで各自模索中。


さぁ!研磨剤の準備が終わると、会場内に一斉に響く「ショリショリショリショリ」という研磨の音。


研磨の際には「均等に、削り過ぎないように、割れないように」という注意があったので最初は緊張もあったと思いますが・・・

研磨開始から20分ほど経過すると、ひたすら手を動かすことに疲れも出てくる時分。

皆さん頭の中に同じ疑問が浮かぶみたいで「これ、ほんとに削れている??」

・・・そうですよね、これ石だもの。


その”魔の時間”を見計らったように土屋先生からモチベーションアップの言葉。

「一旦、洗面器の水でプレートをすすいだら、今から教える要領で自然光にかざしてみてくださ~い」


講座のはじめにあった”光の不思議”の出番。

「偏光板」を重ねてみると、研磨中の石が光を通し、複数の色がキラキラしているのが見えます。


「キレイだね!」とひとしきり盛り上がる皆さん。

会場は、もっと鮮明に見えるように頑張ろう!という気運に包まれます。


自席で土屋先生や平野先生に仕上がり具合を見てもらう参加者の皆さん

「そろそろ顕微鏡で見てみましょう」と声がけされると次のステップへ。


1枚の小さなプレート上でも観察の位置をずらしていくと色彩が変わっていきます。


どの部分がいいかな~とお気に入りポイントを探した後は・・・


自作標本が映し出されたスクリーンやそれをバックに記念撮影をするという流れになり、順番待ちの列が出来ました。


作業が終了後、土屋先生が持参された標本箱の中から、鮮やかな色、不思議な形などの珍しい石の数々を手に取ってもらいました。


石が削れるくらいの時間、作業に向き合って、観察に集中した後は、やはり興味も温まっているようで、説明に聞き入る皆さん。

手に取ってもらった石の説明が一通り終わると、講座は無事終了となりました。

2時間の講座は、終始、和気あいあいとした時間が流れていて、個人的に親子や友達同士で励まし合ったり、小さなプレートを顔をくっつけて確認する姿が微笑ましいこと、この上なかったです。

作業は疲れたと思いますが、やり遂げたという達成感からか、一種、清々しい空気をまといながら会場から帰路へとつかれました。


比較的、暖かい日が続いたこの時期。

同じ日に美術館の前庭(マエニワ)では、「鉄たたけます。」というそのものズバリのワークショップも開催されていました。

苫小牧在住の金属工芸家・彫刻家の方がワークショップの準備をすすめていらっしゃいました。

現在、美術館などの文化施設はリニューアルなどを機に所蔵品の展示や展覧会を行う珍しいもの、貴重なものを鑑賞する場という従来の形と、さらに地域に特化した企画展や様々なテーマでの講座やワークショップを開催するところも多くなってきたような気がします。

科学や化学、自然や伝統、歴史などを融合させながら、地域の皆さんの文化を育む土壌が多様化する潮流なのかもしれません。

一般の方が専門性の高い職業の方、研究者や職人さん等とともに楽しく学べる場づくりと内容の高度化、多様性を目指す取組みを目指す上で貴重な経験をさせていただきました。

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