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【開催報告】サンショウウオ保全に向けた『ビオトープ講習会』in仙台城南高校

2025/03/15

2025年もサンショウウオが産卵しはじめている!という朗報がもたらされた3月のはじめ。

『サンショウウオ保全に向けた「ビオトープ講習会」』は仙台城南高校を会場に2日間のプログラムを終えることができました。

学校の敷地内でサンショウウオが産卵するという稀有な状況の下、仙台城南高校の自然科学部は長年、サンショウウオの研究をしています。

昨年秋に生息環境への悪影響が懸念される事態が起こり、そのお知らせをいただいた後、自然科学部の皆さんと一緒に周りの地形や環境を確認しました。

その後、野生のサンショウウオとそれを取り巻く生物にとって

「住みよい環境とはなんだろうか?」「そのために何かできることはないか?」

一度立ち止まって、まず全員で学び・あらためて考える、そんな機会を作りませんか?と提案したことが講習会企画のはじまり。

同校のサンショウウオを心配している株式会社エコリスの佐竹会長に講師をお願いしたところ、佐竹さんが副理事を勤めるNPO法人日本ビオトープ協会が実施する講習会の内容をアレンジして下さることになりました。


講習会の日時が決まり、仙台城南高等学校長の伊藤俊先生へご挨拶にお伺いしましたが、サンショウウオが生息する環境を教材とすることに大いに賛成いただき、より実践的な学びとなるよう激励をいただきました。


当日は寒の戻りの冷え込みでした。会場へ誘う案内板に身が引き締まるおもい。


同じサンショウウオの保全や研究活動をしている宮城学院高校の自然科学部の皆さんも参加してくれることになり、なんと20名を超す規模で合同開催の様相。

・・・ばかりではなく、他の3つの高校から単身申し込みをいただき、その中に昨年の自然環境調査体験プログラム参加者の姿が・・・(涙)


開会に際して、会場を提供して下さった伊藤校長先生のご挨拶、「城南高校へようこそ!!」と歓迎の言葉からはじまりました。


この講習会は時間がかなりタイトで講師の佐竹さんをご紹介してバトンタッチすると自己紹介から、早速、レクチャーへと進めていただきました。

日本ビオトープ協会の「ビオトープ認定試験研修会」では16時間で消化する内容を高校生向けにまとめていただきました。

お忙しい中、前日まで手直し作業をして下さった佐竹さんに心から感謝いたします。


1日目は1時間×2コマ「ビオトープの基礎知識」「自然環境の復元・再生」、2日目は1時間を1コマ「ビオトープづくりの実践」とワークショップ「ビオトープ計画」

また、佐竹さんはところどころに、ここ数年、ライフワークとされている長年放置されたご実家の敷地と所有の山を開拓する様子や自然環境調査業務の実例などを織り交ぜて下さり、その補足説明がリアルで面白く、理解が深まるポイントでした。


2日目は雪化粧の朝を迎えました。

昨日、帰り際にサンショウウオの産卵場所と卵(一部の人は成体も)の確認したので、サンショウウオのお母さんも卵も心配になる寒さ。

最後のレクチャーは、その後のワークショップに向けてヒントが詰まった内容です。


さて、グループに分かれてワークショップが開始されました。

サンショウウオを目標種として、生息・生育環境を維持するための「ビオトープ計画」を作ります。


「ビオトープ計画」のスタートは、グループ名、どんなコンセプトでどのように利用するのか(目的)を明確にすることから。


意外にも・・・キーワードを出し合って一つにまとめる「キャッチフレーズ」作りで悩み始める高校生達。

すごく真面目に考えてしまっているみたい・・・軽やかにキャッチーにね。


全グループがしばし膠着状態に陥ったため、「他のグループに偵察(?)に行ってもいいよ!」と言うと、早速、席を立ち情報収集。


残り時間を告げると「ムリだよー」という声がありながら、なんとかひねり出してもらったキャッチフレーズも含め、基本設計を項目ごとに発表してもらいます。

マッチング、マシマシ、ぞっこん・・・キャッチフレーズは照れながらの発表だけど面白い!と沸いたり感心する声もあがりました。


さて、最後はサンショウウオビオトープの設計です。

白紙にフリーハンドでサンショウウオの生息地や産卵・生育場所として”良い環境”にするため、平面・断面から工夫を考えていきます。

最終的に学校等へ「ビオトープ計画」を提案することが目標。

とはいえ、周辺の建物の移動とか土地の改変は出来ないので、相当、厳しい条件で考慮しなくてはなりません。

生息・生育環境を維持するために実現可能な範囲で必要な施設や設備、維持管理のための作業項目、方法や期間などを意見を出し合います。

すでに時間が押しているのもあり、先生やアドバイザー役と積極的に話す姿は、ちょっと緊張感のある雰囲気に。


そして発表の時間。それぞれのグループの机に集まって発表を聞きます。


発表の後は質疑応答や意見交換、最後に佐竹さんからコメントをもらいます。


ワークショップの課題設定は、実はハードルが高めであると認識しておりました。

また、レクチャーも高校一年では、まだ学習していない内容もありました。

しかし、今は分からなくても体系的に学ぶことや知識の引き出しの中に”箱”を作っておくことは意義があることと思います。

知識はこれからいくらでも得ることが出来るとして・・・

グループに分かれて基本設計する場面では、ビオトープ作りの目的や利用イメージの擦り合わせを行いスタート地点を定めること。

個々に意見(キーワード)を出し取捨選択や増幅を行い、定期的に全体を俯瞰して方向性を確認しながら、さらに加除行うこと。

具体的な方法を検討する場面では、実現のために参考になる実例や条件に合う手法や技術等がないかを調べていくこと。

少し難儀したけど・・・グループ名(プロジェクト名)やキャッチフレーズを作ることは愛着が生まれたり、全体の士気や参加意識を高める作用がありそうです。

これらのプロセスは協働して何かを成し遂げるために必要不可欠なこと。

今後の活動や経験の中で、そのプロセスを意識したり、その効果を実感したりしながら会得してほしいな、と思いました。


ワークショップは予定時間をオーバーしましたが、発表まで漕ぎつけたことに皆さんから、安堵と達成感の表情が見受けられました。

講習会の締めくくりとして、講師の佐竹さんとAOBA代表から挨拶、そして、城南高校の自然科学部顧問の先生に感想をいただきました。


4つのグループで作成した「ビオトープ計画」は、具体な情報収集と検討が必要なため、城南高校の皆さんに託します。

最終発表と提案に向けて仕上げていただく予定で、どんな計画になるのか、楽しみです。

そして、宮城学院高校のサンショウウオは、また異なる生息・生育環境なので両校の交流も楽しみ!

生き物が”生をうける”ということは、もれなく子孫を残すという営みを繰り返すことが大前提。

この春、サンショウウオにとっては、いつもと同じ巡ってきた季節。

この二日間、学び・考えた高校生が、これから自然や生き物と触れる時に、今までより解像度が高く、より鮮やかに感じてもらえたら嬉しい限りです。

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