NEWS 〈 青葉環境保全 〉からお知らせ
山形県郷土館「文翔館」
2020/11/23
11月とは信じられないほどコートの中が汗ばむような陽気の一日。
スコーンと晴れわたった青空の下、念願叶い興奮を抑えられない私の目の前にあるのは山形県郷土館「文翔館」
山形出身の友人からすすめられて以来、ずっと来てみたかった場所の一つ。
山形県庁のすぐ近く、市内の中心地にドンっと構えるその威容には、ただただ溜息が漏れるばかり。
明治9年に山形県が誕生。初代県令のもと山形県庁舎として建設されたこの建物は明治44年山形市北大火により消失という憂き目に遭遇・・・すぐに復興が計画され大正5年に無事再建。
現在は国の重要文化財の指定を受けており、郷土の誇るべき文化財「山形県郷土館(通称:文翔館)」として公開、大切に保存されているそうです。
入り口には文化財のため、「ピンヒールや金具のついたスパイクなどの履物禁止」と看板があり、知らずに来場された方には、なんと履物を貸してくれる模様。
そして、この施設は入館料が無料!
受付の方は、昔見たマンガ「はいからさんが通る」の主人公のような矢絣(矢羽のデザイン)の着物に袴という出で立ちで迎えてくれます。
エントランスから目の先には、映画のセットにしかみえない意匠を凝らした大階段があり、ステンドグラスの柔らかい光がモダンな空間を包みます。
ステンドグラスの向こう側には赤レンガの中庭が。
窓ガラスに近づくとちょっと歪んで向こう側が見える・・・今では珍しい創建当時のものだそうです。
ピカピカに磨かれた廊下には絨毯のような模様が施され、丸いアーチがアクセントの天井、マットな清潔感漂う白い白い壁に優しいベージュの窓枠・・・どれをとっても美しくて、自分が特別な人になったような気分に。
そして応接室は外国のお城のような豪華さ!
大理石の柱。重たそうなカーテンや調度品は全て落ち着いた上品な色調で統一されています。
天井が高いので分かりにくいのですが、シャンデリアは2mのサイズ。
お客様用の部屋ということで、他の部屋よりも細部まで趣向が凝らされており、天井の淵を額縁のように巡らせてあるのは漆喰の天井飾り。
様々な花や葉、果物などがデザインされギッシリと連続しており目を奪われます。
応接室からは建物の象徴的な時計台の下に位置したひろいバルコニーがあり、出てみると山形県庁を右手に市中の大通りがまっすぐ伸びて気持ちが良いほど。
まさにここを始点とした町づくりが行われたことが分かります。
下は少人数の方に対応する貴賓室。
織りの細やかなソファーは座り心地もよさそうで、暖炉の上の飾り棚の細工も見事でした。
こちらは県令の執務室。調度品はグンとシックになりますが、椅子やテーブルの脚が猫足になっていたり、と格調高いことには変わりはありません。
「るろうに剣心」の映画で使われたようで、一場面の写真が飾ってありました。
ここは県民の郷土理解も目的とした施設なので、明治維新~現代までの歴史と町の様子が時代ごとにわかるように展示してあります。
広い広い山形県。
最上、庄内、村山、置賜地方のジオラマや特産品の展示も分かり易くて嬉しい限りです。
下は庁舎と渡り廊下で繋がっている議会棟。
明治のはじめは別の場所にあったそうですが、大正の再建の際に旧県庁舎の隣に引っ越してきたそうです。
広い議会場は、この日の午後にバイオリンのコンサートがあり、リハーサル中とのことで入場は出来ませんでした・・・しかし!
2階の廊下から中が見える窓があり、期待を裏切らない重厚な空間に響くピアノとバイオリンの美しい旋律をちょっとだけ楽しめる幸運に恵まれました。
ここではクラシックコンサートや落語など様々なジャンルの文化事業が行われているようです。
折りしも七五三のシーズン。文翔館の広場には晴れ着姿の可愛らしいお子さんを連れた家族が続々と集まってきて、笑顔で記念撮影をしていました。
さて、文翔館を出て、大通りを少し進むと昔ながらの濠を中心に蔵をリノベーションした商業施設が出現。
名産品の織物やお茶屋などが軒を連ね、お昼時だったので蕎麦屋には多くの人の姿がありました。
驚いて足を止めてしまったのは、文翔館と同時代のものと思われる現役の建物。
なんと病院でした!
全体的にゆったりとした町割りのようで道路からのアプローチが長く、大きな樹々の紅葉との対比が素晴らしい。
笹谷を抜けて臨む山形市内は山々にぐるりと囲まれて本当に美しかった。
最上川のほとりでは炊煙が上がり、芋煮を楽しむ人々の姿がありました。
自然の雄大さもさることながら、文翔館のような明治・大正時代の文化財級の建物が端然と在り、生活に溶け込んでいる。
一方、昭和レトロなビルは、あちこちでリノベーションされて洒落っ気抜群の存在感を放っていました。
こういうのって余裕とか、心の豊かさを感じる。
集客施設、ショッピングモール、高層の商業ビル・・・土地を切り取り、そこにあったものを壊して建てると”その土地の匂い”が一切消えてしまうことを残念に思っていたので、なんとも羨ましい、けどホッとする一日となりました。
人々が日常から離れて旅をする時に求めるものの一つに”その土地の匂い”を感じたいってこともあるよね、と思った次第。