AOBA青葉環境保全より良い環境をめざす

NEWS    〈 青葉環境保全 〉からお知らせ

AOBA手漉き和紙研修会

2021/04/19

この春、これまでお世話になった東北大学災害科学国際研究所 歴史文化遺産保全学分野のY先生が新天地へ行かれることになりました。

(AOBAのブログ)「宮城歴史資料保全ネットワーク」~保全は人の力~

古文書=”和紙”との関わりが日常的なY先生。

何かできないかと思案の末、はなむけに手漉き和紙研修会を開催することに。

講師は、川崎町笹谷の『手すき和紙工房 潮紙』塚原英男さん。

研修会はトータルで3時間ほど。紙を漉く時間は一人15分程度とのこと。


 

 

 

 

 

 

まず、はじめに和紙の原材料のお話を伺いました。

下の写真は、「楮(こうぞ)」の枝、枝から剥がした外皮、外皮の内側にある靭皮(じんぴ)、そして靭皮を叩解し繊維となったもの。

原料から和紙が出来上がるまでの途方もない工程とその手間暇を考えると・・・

“紙を漉く”という部分は、ほんの一部分であることを実感しますね。


 

 

 

 

 

 

さて、工房内を移動します。

この笹谷地区では、家屋敷の前・後に水路があり、昔からそれぞれ上水・下水の役割を果たしているそう。

この上下水が引かれている十数戸の家が、“笹谷”と呼ばれるとのこと。


 

 

 

 

 

 

 

 

塚原さんの工房は、笹谷の伝統的な古民家をリノベーションしたもの。

居住建物と裏手にある馬小屋(こちらは現在、紙漉き場で使用)は、渡り廊下で繋がっていますが、その廊下の下を笹谷の山々の水が勢いよく流れています。

通年水温も安定している、紙漉きに最適なこの水を、ポンプで汲み上げて使用しているとのこと。


 

 

 

 

 

 

 

 

さて、紙漉き場に到着。
と、ここで気が付いた・・・今日はここで紙を漉かせてもらえるの!!?

普段、塚原さんがお仕事でお使いになっている“ふね”の前に立つと、あらためてその大きさに感動。思わず緊張してしまいます。


 

 

 

 

 

 

まず、“ふね”の中に張られた水に、楮(こうぞ)の繊維の塊を投入。


 

 

 

 

 

 

塚原さん「師匠からはおにぎり〇個分と教えられたけど、考えてみれば手の大きさは人それぞれだからね。ここは勘にたよるところだけど」


 

 

 

 

 

 

木の棒で豪快にかき混ぜていくと、ふわっと雲の様に水中に散っていき、手ですくうとほぐれた繊維が手にまとわりつくように。


 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

水に散った繊維は、このままでは結合しません。

ここで登場するのがツナギの役目となる、“トロロアオイ”の根から抽出される液体

布袋をギュッと絞ると透明な粘液が長ーく垂れていきます。
すごいとろみです!


 

 

 

 

 

 

楮の繊維とトロロアオイの粘液をよく撹拌するために、櫛の歯状の道具の出番です。

道具類は一連の手順に沿って「引き出しやすく、納めやすい」無駄のないレイアウトになっております。


 

 

 

 

 

 

“ふね”の中で楮の繊維はさらに霧のような細かさになり、ここで気になる塵をピンセットで取り除いたりします。

塚原さん「下拵えの時に取り除いたつもりなんだけど、なかなか完璧にとはいかない(苦笑)」


 

 

 

 

 

 

漉き桁と簾のセットの仕方、桁の持ち方、はじめに桁を水に入れる角度(これが結構、急な入水角度!)

さらに、桁にすくった水の揺すり方とその回数、桁に残った水の切り方(上手にできるといい音がする)などなどなど・・・

丁寧に実演しながらとはいえ、一気に説明を聞くと、私なぞは軽いパニックに。


 

 

 

 

 

 

さて、紙漉きの開始です。


 

 

 

 

 

 

とにかく大事なことは、水の動きを止めることなく、なるべく均一に・・・

縦に横に揺すること数回。

桁の端まで水が行き渡らなかったり、水が留まりすぎるとたちまち厚さが変わってしまいます。


 

 

 

 

 

 

“ふね”から桁をあげると簾の上にはすでに和紙の原形が出来ています。


 

 

 

 

 

 

桁の留め金を外し簾をつまみあげると・・・頭上を通して真後ろの紙置き場に。


 

 

 

 

 

 

ここは、やりなおしがきかないので、右手・左手や身体の使い方が決められています。


 

 

 

 

 

 

これから時間をかけて水切りが行われるので、シワが出来ないように和紙を重ねていきます。


 

 

 

 

 

 

他のお二人の紙漉きを見ている間、手に付いた繊維は乾いて毛羽立ってきました。

本当に細かな繊維!!


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

漉いた和紙を間違いなく本人にお渡し出来るように、目印も忘れません。


 

 

 

 

 

 

手順に頭がいっぱいでガチガチでしたが、塚原さんの名指導も手伝って何とか形になった模様。

出来上がりが楽しみです!!

 

和紙の完成まで、まだまだプロセスが続きます。

先ほどのように漉きあがった和紙は、軽く水切りさせた後、3トンもの“万力”にかけます。

その後、塚原さんは昔ながらの板張りで、自然乾燥をさせています。

(他県の和紙産地視察の時、熱源のあるアルミ版に張り付けて乾燥させているのを見ました)


 

 

 

 

 

 

ほぼ水分が抜けた和紙は、柔らかい布地のよう。

普段、紙は破れる・折れる・シワになる・・・といった固定観念が強いのでためらいなく作業を行う塚原さんの扱い方に驚きます。

塚原さん「繊維が絡みついているから、そうそう破れません」

板に張り付ける際に刷毛で空気を抜くので、下の写真のように刷毛目がつく・・・

これが、自然乾燥させた和紙の証。


 

 

 

 

 

 

約2週間後。

天候の関係で乾燥期間が少々長引きましたが、受け取った和紙は立派な仕上がり!(と褒めていただきました)

自分で漉いたと思うと感慨もひとしおです。


愛読書のカバー、大切な方へのお手紙やプレゼントの包み紙・・・何か特別なことに使ってみようと思います。

今まで体験することがなかった紙漉きのこと。

見るとやるとは大違い!

繊細かつ大胆な職人技に触れる良い機会をいただきました。

 

塚原さんは、芸術大・美大の学生さんの研修を受け入れていらっしゃいますが

一般の方の紙漉き研修も引き受けて下さいます。

複数人でも会場代と講師料は一律(原料込み)、和紙は、単価×希望枚数のお代で実施が可能です。

手すき和紙工房潮紙(Facebook)

ご希望の方は是非!

PAGE TOP