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藍の国 ニッポン ~株式会社永勘染工場~

2021/04/25

1890年(明治23年)の日本にアメリカから記者として訪れたラフカディオ・ハーン(帰化後、小泉八雲)は、日本を「青(藍)の国であった」と伝えたそうです。

当時、まだ西洋化の波が押し寄せる少し前、江戸時代の気風が色濃い時期。

市井の人の着物、前掛け、商家の軒先の暖簾など、藍色に染められた布がそこかしこに溢れており、生き生きと動く人々の様子を興奮の面持ちで眺めていたことが「知られぬ日本の面影」に記されています。

 

仙台市若林区、その名も”南染師町”に構える 株式会社永勘染工場

暖簾、幟(のぼり)旗、法被や半纏、前掛け、手ぬぐいなど伝統的な”本染め”はもちろん、現代的なグラフィックやフルカラーのプリント対応までニーズに合わせた染物全般を取り扱っていらっしゃいます。


訪ねた日は偶然にも創業記念日の翌日で、なんと創業134年目を迎える老舗です。

まもなく端午の節句。

店舗の玄関には大きな”兜”柄、見るからにおろしたての暖簾がかけられていました。

風になびく暖簾は老舗店舗の看板と相まって”風情”という言葉がピタリと当てはまります。


伊達政宗公愛用、三日月前立ての兜をデザインした暖簾は永勘染工場オリジナル。

深い藍色と鮮やかな青のコントラストが清々しく、金の輝きを思わせる三日月の黄色のグラデーションが一段と映えています。

永勘染工場では季節や年中行事(クリスマスなど)に合わせ、オリジナル暖簾をかけかえて、通行人やご近所の方々の目を楽しませているそうです!

一昨日まで玄関を彩っていた春らしい桜が散る図柄の暖簾は職人さんがお洗濯、また来年のこの季節までお休み。


招き入れていただいた店舗内は明るく和モダンな雰囲気、高い天井には立派な梁が頼もしい。

ギャラリーのようにオーダーメイドの前掛けがズラリと展示されています。


前掛けは様々なお店、中にはアウトドアブランド「CHUMS」とのコラボ品もあります。

宮城が誇る塩釜の浦霞醸造元 株式会社佐浦さんが「純米吟醸 浦霞No.12(ナンバー トゥエルヴ)」の発売記念と海外取引きのために作製された前掛けが展示されていました。

昨今、世界的な日本酒ブームにおいて丈夫で機能的な前掛けはきっと海外の方の目にも留まるでしょう。


応接セットは畳敷き、小上がり風の腰掛け式になっていて、前掛けをリメイクしたという座布団がとても素敵です!


さて、この日はとあるプロジェクトのご相談でお伺いしました。

堅牢な黒を染め抜いた半纏姿も粋な代表の永野仁輝さんは5代目。

我々の質問を丁寧に聞いて下さり、的確なご助言をたくさんいただきました。


打ち合わせが終わり、外に出てみると店舗の目の前には「七郷堀」

伊達文化を支えた染師達が多く移り住み、七郷堀の水を使って染物の作業を行っていたため、川辺へと続く階段に当時の名残りが感じられます。


このような文化的背景や自然環境を守っていくために永野さんは”水環境”の保全というSDGsをも意識した取り組みに強い意欲をお示しになられていました。

永く受け継がれる技を継承すると同時に、コロナ禍における新しい生活様式や価値観に対応していくことは日本の伝統産業の存続にも直結する重要なアクション。


工場の裏手では、白地にくっきりと神様の御名が染め上がった大きな幟(のぼり)が天日干しの最中。

コロナ禍により、地域のお社ではお祭りの機会がなくなっており、氏子さん達のせめてものお気持ちとして幟を新調されることも多いとか。

 

そうそう!

永野さんに工場にあった「愛染明王」様のお札のことをお尋ねしたところ・・・

南染師町は江戸時代、京都からお迎えした愛染明王様が鎮座されている地で

「藍染=愛染」のご加護にあずかれるよう守護神として信仰しているそうです。

 

今年こそ、愛染様に喜んでいただけるような催しものを再開できるように地域の皆さんと計画中とのこと。

実現の日が待ち遠しいですね。

 

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