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岩手県八幡平 ~花便り~
2021/07/25
八幡平山頂の散策では”オオシラビソ(アオモリトドマツ)”の林が広がる石道の傍らや
池や沼の点在する湿地帯で、実にたくさんの植物達に出会うことができました。
これまでに行った山岳地帯でお目にかかったもの、”はじめまして”のもの。
道々に植物達を紹介する看板もありますが、帰宅後に現地で調達したパンフレットと撮影した写真を見比べて調べたり、記憶を反芻する、そんな時間も楽しみの一つ。
ベニバナイチゴ(紅花苺・バラ科)
何とも美味しそうな名前に似合う深紅の花が下を向いて咲いてます。
時期になると色もそのままに瑞々しい果実をつけます。
シラネアオイ(白根葵・キンポウゲ科 )
日本固有種で花びらのように思える紫色の4枚の部分は実は萼(ガク)
「優美・完全な美」という花言葉通り、女王然とした気品溢れる人気の高山植物。
シラネアオイは山菜のコゴミみたいにこぶしのように丸まって芽を出し、大きな2枚の葉に包まれた蕾をのぞかせて、すっきりと立ち上がっていくそう。
コヨウラクツツジ(小瓔珞躑躅・ツツジ科)
壺を逆さにしたような、プクッと可愛らしい形。
瓔珞(ようらく)はもともと古代インドの王族の装飾品で魔よけ意味もあり、お寺の仏壇などで天蓋などと吊るす壺形の荘厳(しょうごん)。
モミジカラマツ(紅葉唐松、キンポウゲ科)
ミヤマキンポウゲ(深山金鳳花・キンポウゲ科)
チングルマ(稚児車・バラ科)
イワカガミ(岩鏡・イワウメ科)
葉の周りのギザギザが厳ついにも関わらず、細かく裂けた花びらと淡い紅色が可憐。
ハクサンチドリ(白山千鳥・ラン科)
花びらがまぁるい大らかな雰囲気の花々の後に出会ったせいか、高貴な紫色、とんがったサルビアの様な姿が新鮮に映り印象が強く残りました。
ショウジョウバカマ(猩々袴・メランチウム科)日本原産。
「猩々」とは中国の想像上の動物。オラウータンに似ているけど、顔と足は人に似て髪は赤く長く垂れ、大酒を飲んでは舞うという。
そんな能の題目があるそうで、「猩々」専用の装束の赤く垂れた頭髪を花、下の緑の葉を袴に見立てたことが名前の由来。
ワタスゲ(綿管・カヤツリグサ科)別名はスズメノケヤリ(雀の毛槍)
初夏の風物詩として登山者に人気があるのですね!
花は意外なほど地味な灰色、気が付かないこともあるそうで。
綿毛の様にほっこりしたこの姿は花が終わり、種子が熟すと風に運ばれてまた別の場所へ。
イワイチョウ(岩銀杏・ミツガシワ科 )
「葉が銀杏(イチョウ)に似ているという由来だがあまり似ていない」という記述に一票!
開ききる前の葉が”ハート形のカップ”みたいで、群生している姿はとても可愛らしい。
写真は大きく撮影しているけれど、とても小さな植物で隙間なく埋め尽くす様子は圧巻でした(下の写真)
ヒナザクラ(雛桜・サクラソウ科)
寄っていかないと見えないほど小さな小さな花。
その健気で愛らしい姿は両手で包んで「よしよし」と声をかけたい気持ちに。
コバイケイソウ(小梅蕙草・ユリ科)
花が付く前の姿は山菜の”ウルイ”に似ているなぁと思っていましたが、猛毒があるそうで・・・誤食事故も多発している模様。くれぐれも気を付けて下さい。
ミズバショウ(水芭蕉・サトイモ科) 澄んだ水面が鏡のようです。
エンレイソウ(延齢草・シュロソウ科)
サンカヨウ(山荷葉・メギ科)
純白の儚げな花は雨に濡れると”透明”になり、ガラス細工のような神秘的な佇まいに。
キヌガサソウ(衣笠草・シュロソウ科)
車輪みたいな並びの葉の真ん中に幾何学模様を思わせるクリーム色の花が真面目でエレガントな雰囲気。
八幡平の本格的な夏はこれからで
紅葉の時期、厳冬期まで植物や生き物達の美しくも力強い生命のリレーは続いていくのでしょう。
高山植物を調べるようになって、驚くのは私たちの身近にあるけれど名前も知らない神社仏閣の装飾品や能楽、仏教や神話の世界の物語に由来する名前がとても多いこと。
古の日本人の語彙や教養の深さ、発想力の豊かさは、敬い誇るべき日本文化の根幹だと感じます。