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【御礼】『虫とアートの世界 ~昆虫奇譚 虫とアートと標本と~』その3

2023/12/12



<アイキャッチ画像及び、上の写真 ★ 撮影 昆虫写真家 法師人 響さん ★>

このブログ記事の前半は、贅沢なことに写真家の法師人さんが撮影された写真を使用させていただきます!使用許可に感謝申し上げます。


トークイベント前半のギャラリーツアーが終わり、後半はファシリテーターの佐藤恒平さんから質問が投げかけられていきます。

昆虫標本作家の福井 敬貴さん、子どもの頃から身近にいる小さな甲虫を集めはじめ、宇宙船のように人が見たこともなく、思いもつかないような不思議で多様なその”形態の美”の虜になったそう。


少し前までは、福井さんのような立体的な標本を作る人は少なかったそうで・・・

何故か、日本の”展足(上の写真参照、標本をつくる時に虫の身体を整形する技術)”は、一様に手足をまっすぐに伸ばし、揃えることが主流であったが、ヨーロッパなどは、ふっくらと丸みをつけたり、虫の動きに沿った形にする、などの違いがあったとのこと。


佐藤 正和 重孝さん、幼少の頃、お母さまから何気なく渡されたビニール袋の中のクワガタとの出会いは「こういうものが身近にいるんだ!」と衝撃だったそうで、そこから虫の採集に明け暮れる日々がはじまったとのこと。

憧れていた虫に出会った時、脳内に広がるドーパミン(幸せホルモン)により、制作意欲を通りこし、作品の完成イメージが浮かび上がるそう。

何度か口にされた「幸せホルモン」という言葉には作家さん全員が同意の笑顔。

「好きだと思ったこと、やりたいと強く思ったことは、その時に時間やお金の問題で実現できないと思ってあきらめないで欲しい。

思い続けていくことが大事で、時間が経過する中で、できる時が来たら、その時にやれば良いと思う」


生涯2000㌔を渡る蝶、海も渡るという未だその生態が謎に包まれている「アサギマダラ」が一番好きという櫻田 馨子さん。

学生時代は、虫の生息環境の保全活動にも取り組んだ経験もあり、また、会いたいと思った蝶を求めて全国各地やアジア圏にも足を運んだというお話し。

画を描く時は「生き生きと、”そこにある姿”の印象を表現したい」

「標本商は、虫好きなら憧れの職業の一つではあるが、海外での採集活動は過酷を極め、現実はなかなか厳しいもの。正直、おすすめはしないけど、でも、それでもやりたい気持ちを抑えきれないのが、この仕事」


人が一生かけても、とても巡り合えない種の数がある虫の世界。

ご自分で納得のいく標本箱を作るには、時間はどのくらいかかるものか?という質問に、前田 健さんは「10年くらいではまったく無理。中には、25年も時間を要したものもあります」

会場の中には、これから、憧れの虫の姿を求め、海外遠征に行くこともあると思うけど、日本では考えられないような環境や異国の文化やルールがあるので、下調べは念入りに行うこと、また、現地の人とのコミュニケーションを取ることは重要だというお話しもありました。

<以上、トークショーの様子 ★ 撮影 昆虫写真家 法師人 響さん ★>


法師人 響さん「虫の小さな身体に形態には写真は二次元(平面)の世界であるが、虫たちの想像を超えるような色や立体構造をカメラで捉えたい」

「写真だけ見て同定する時は、よくよく気をつけてほしい。できれば、実物を見てもらい、身体の裏側や細部の色や形も確かめてほしい。それほど多種多様に分かれるのが虫の世界」

写真は薄っぺらい世界なので・・・と発言した法師人さんに対して、すかさず彫刻家の佐藤さんがマイクを取り「でも、法師人さんの写真は立体的に見える(映る)」と返す場面も。

トークイベントが終了すると、法師人さんが佐藤さんのところに駆け寄り「とても、嬉しかったです!」と伝えていらっしゃいました。


そうそう!芸術系の大学から学生さんがお越しになり、佐藤さんの作品の前に並び、長い時間お話しを聞いていらっしゃいました。

 

さて、この日、会場に集まった”虫愛”が強いお子さん達。

午前に訪れたご家族連れの中には、自分で標本を作るというお子さんもいらっしゃいましたが、鑑賞する姿を見ていると、それはそれは、ゆっくり、じっくり。


トークイベント参加者の小学1年生のコウ君は、厳選した自作の標本箱を持って来場。

サインをもらうために、福井さん、法師人さんの甲虫図鑑も持参してくれました。

この日まで、どの標本を持っていくのか、ずいぶん悩んだそう。


最初は恥ずかしがっていたけれど、作家さん達に囲まれて、楽しそう。

標本づくりのきっかけは、近所の方から標本作製の道具を譲ってもらったことだったとお母さまから伺いました。


早速、コウ君の展示ブースを設置すると来場者の方に堂々、お披露目タイムです。

来場者の皆さんに標本を見てもらったことや、ご家族の方は作家さんから「お子さんの夢を応援してあげて下さい」と言われたことが嬉しかったと、後日、人伝にメッセージをもらいました。


法師人さんの熱烈なファン(追っかけ)というリュウノスケ君。

早い時間から来場されて、各ブースを丁寧に見て回っていました。


トークショーでは、後学のため?に、作家さん達の隣にお席をご用意させていただきましたが、彼の目には、どんな景色が映ったのでしょうか?

質問に答えつつ、作家さんから提供された制作や採集活動の様子、話題になった虫や好きな虫の写真などを見ながらのお話しもあって、トークショーは終了しました。

トークイベントは90分間という長い時間でしたが、会場にいらしたお子さん達は、大人と変わらず、とても真剣な眼差しと態度で聞き入っていました。

 

さて、昆虫標本作家の福井さんは「仙台市科学館」とハンコが押された昆虫採集について詳しく書かれたマニュアルを持っていらしており・・・

「何故か、ずっと家にあったんですよね」と言いながら、ホチキス留めの幾分、黄ばんだコピー用紙を見せて下さいました。

小学生の頃、ご家族の転勤で数年間、仙台に住んでいたそうで、その時、仙台市科学館に配架されていたものだそう。

何がきっかけとなって、どんなことに生涯夢中になるのかは、人それぞれ。

虫アート(彫刻、絵画、標本、写真)分野の第一線で活躍されている「自然と虫を愛する」作家の皆さん、仙台滞在の2日間は虫談義で夜が更けていったとか。。。

来場いただいた多くの皆さま、本当にありがとうございました!

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