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復興大学「現地実習」~気仙沼編~【その2】

2019/12/20

復興大学「現場実習」気仙沼編の続き。

今年4月に開通した「気仙沼大島大橋」が望める気仙沼魚市場で昼休憩を挟み、午後の会場となる“ship(スクエアシップ)”に到着。



建物の中からも、外のデッキからも、気仙沼の顔とも言える“内湾”がドンっと広がる最高のロケーションを堪能できます。



施設内は、解放感のある雰囲気が満ち、誰でも利用できる“くつろぎ”スペースやちょっとした打合せなどに使い勝手の良さそうなレンタルスペースがあります。その他にも音楽スペースや地元FM局が入り「新しい気仙沼」の拠点を目指しています。隣の建物にはおしゃれなカフェがレストランが入り、周りの施設の工事も急ピッチで進められています。



 

さて、本日のはじめのレクチャーは、気仙沼市役所で震災復興・企画部の小野寺さんです。

小野寺さんは”気仙沼”というゼッケンをつけて、フルマラソンに多数参加。

震災の時に支援してくれた全国の皆様に感謝の心を伝える「走る気仙沼伝道師」として活躍されています。すごい!



気仙沼市の震災復興計画は「海と生きる」

これは、復興に向けて「気仙沼って、なんだろう」と考えた答え。

「今、非常にしっくりきています」と小野寺さんは言います。

「震災前から気仙沼という町は存在していて、3.11は“一つの出来事”だと思っている。要は、3.11を活かした気仙沼にしていけば良い」

この言葉を聞いた時、やはり海を愛してやまないという気仙沼の人々の清々しい誇りを感じました。



そして、人口減少、現代人の魚離れによる漁業の将来への不安など、震災前からの課題に対して、『地域の社会課題の解決なくして真の復興なし』という志のもと舵をきります。

人を中心としたまちづくりを目指し、重要視する人材育成と人材確保のため、市が挑戦していることとして・・・

雇用促進(U、I、Jターン)、技術・知見を持つ方の職場創出、基幹産業である漁業の底上げ、企業誘致、起業家支援やサテライトオフィスの整備、結婚・子育て支援の施策、観光戦略の立案など。

キーワードは「何かが起きそう、起こせそうなまち。チャレンジできるまち、チャレンジを応援するまち」です。

小野寺さん。『最終的には地元のじっちゃんやばっちゃん達から、一度は気仙沼の外に出た孫に「なんだか、面白そうだから戻ってきてみたら?」と言ってもらえることが目標です。』

 

続いて、お2人目の講演者は、気仙沼商工会議所 会頭の菅原昭彦さんです。

地酒ファンに人気の酒蔵「気仙沼男山本店」の4代目社長でいらっしゃいます。



菅原さんからは、水産経済8割という気仙沼が築き上げた「日本一発達した水産クラスター」の事業所、その8割が被災した状況から復旧までのお話がありました。

(水産クラスター:漁業における関連産業。資材、施設、加工、養殖、造船、燃料、メンテナンス、市場など)

気仙沼では早期に復興計画を打ち出したそうですが、いざ、進めようとするとなかなか難航する場面が多々出来。

スピーディーかつ合理的に進めなくてはならない現場において・・・

規制や所管が複雑に絡み合ってしまい、前例や制度がないためにストップしたり、方針が違うことで資金が小出しになってしまうこともしばしば。

皆さんで考えた「復興計画」や「戦略」を”お飾り”にしないことに、相当心を砕かれたそう。

その中で、実感したことは「必要不可欠なのが物事をけん引する“人(ひと)”」の重要さ。

リーダー的人材育成のためにも、立場や地元との関わり方など、多角的なレイヤーから、学びの場を創りました。

最終的には自分のアイディアをビジネスモデルに昇華させた方が起業家として、次々と誕生しました。

 

また、震災以降、国際情勢、気候変動などによる漁獲高の増減に左右される、という危機感は「このままではダメだ」という新しい視点を与えます。

それが、気仙沼に“観光戦略”を!という挑戦へとたどり着きます。

例えば、海産物を目当てに訪れた人々に対する漁師や漁具屋体験、発砲スチロールの「函」屋体験などの体験プログラムを考案。

きちんと「有料」にすることにより、提供者に継続性と向上する意欲を期待しているそう。

連動して漁業以外の会社も「ここでしか出来ない」プログラムを提供するに至り、訪れた人にとっては、選ぶ楽しさが付加価値となります。

ちょいのぞき気仙沼

多くの震災ボランティアが訪れた気仙沼は、その後も交流が続き、地元の方が”おもてなし”として観光案内をする機会が増えたそうです。

一般の方が自ら歴史や文化を学び、さらに「活かすべき資源」「足りないこと」など”外目線”がどんどん養われた結果、観光地としての改善点や新しいアイディアが出てくる・・・

こういう「人×人」の経験から派生する相乗効果は、活性化と無理のない循環を生み、豊かな広がりをもたらすものではないかと思います。

 

レクチャーの最後は、商工会議所会頭として菅原さんの言葉で締めくくられました。

これからの気仙沼に必要なものは、何より人材。

気仙沼の経済をけん引していくのは、やはり経営者たち。

「“公を解する経営者”を育てたい」

 

復興大学「現地実習」の3コースでは、

どの地域においても産官民と地域が一丸となり震災を乗り越えた上で、次のステージへと飛躍するために独自の目標や計画を持って取り組みを推進していることが分かりました。

そして、共通することは「自分たちの住む地域」を見つめ直すことを始点として、より良い地域創生を目指し、今あるもの、ないもの、これから必要なもの・・・を皆さんで考えたこと。

あらためて、復旧と復興の意味は全く違うことだと感じました。



 

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