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国際会議参加者への記念品製作プロジェクト3 ~和綴じ製本~

2023/10/25


雄勝石、手漉き和紙(の巾着)など、伝統文化や産地には特徴や歴史、東日本大震災のことなど伝えたいことがあるとして

国内外のゲストに持ち帰ってもらう記念品には、それらの情報が一つにまとまった説明書が同封されているといいな、と思っておりました。


製本技術は、いわゆる「洋書」の綴じ方として、ヨーロッパに古くから発展・確立した方法がありますが、日本にも同じく”和綴じ”製本というものがあります。

なんとなく知っているものの、”和綴じ”という存在をしっかり認識したきっかけは上の写真(手すき和紙+藍染め+和綴じ)の芳名帳。


ご朱印帳ブームもあり、存在を知る方は多くなったと思いますが、これも”和綴じ”


一方、東日本大震災後、手すき和紙工房『潮紙』に「何かのお役に立てれば」と支援品としてタイから送られてきたタイ産の和紙(上の写真)

この場合、和紙という表現が良いものかどうか・・・

要は、人の手で木の皮や象の糞(!)から繊維を取り出し、”ざる”でこし、整形して乾燥させたもの。

品質をどうこう言うつもりはありませんが、手間暇かけて繊維を細く、こまかい塵取り作業を入念に行うことで、なめらかで均一な厚さを実現している日本製の手すき和紙を見ている私からすると、パリパリと音を立てて折れる手触りは、少々驚き。

ちょっと日本では見かけない色使い。中には油性ペイントマーカーペンを使いクリスマスツリー等のモチーフを金色、銀色とにぎやかに手書き模様が施してあるものもありました。

兎にも角にも、復興支援のため送られてきてから12年間、「使用用途が見つからなかった」という潮紙の塚原さんから30枚ほど譲ってもらうことに。

そして、アイキャッチ画像(本ブログページの冒頭にも掲載)にあるアイボリー色の紙は「コットンペーパー」という、”綿”からできたもの。

こちらは、和綴じ製本作家の”ながさわゆうこ”さんからご恵与いただきました。

綿を使用しているので、水分を感じる感覚、手触りは、どこかしっとりと柔らかい。

震災後、塩害被害(海水に浸った)に遭った田畑において、土に残留した塩分を吸収するため、綿花栽培をおこない、さらに収穫した綿を商品化する復興事業がありました。

こちらは、松島で実施された同様の事業で、製品にはならなかった綿くずを使用して紙漉き製法により、「コットンペーパー」になったそう。

上記、2つのストーリーからなる、2種類の大判紙に「表紙」を担ってもらうことになりました。


説明書は”和綴じ”製本、そして、”和綴じ”やその手法をできるだけ広めたいという思いもあり、一般の方にお手伝いいただきたいな、と考えておりました。

和綴じ製本作家の”ながさわゆうこ”さんには、今回のプロジェクトについて、事前に相談をしており・・・

いくつも種類がある”和綴じ”の方法の中から、初心者でもできるもの、かつ、一人でもそれなりの冊数に挑戦しやすい形を検討していただきました。

4つ目”綴じ”、3つ目”綴じ”・・・などの試作品も。

(上の写真には消しゴムよりも、はるかに小さな本もありますが、かわいいので掲載してみました。ながさわさんは、どんな紙でも本にしてしまう魔法使い)

しかも英文になるので、綴じ側は左右逆になります。

余談になりますが・・・写真のオレンジ色の表紙は、「仙台七夕まつり」で使われた七夕飾りの”吹き流し”を使用したもの。

最初は、東北7大祭りとの所縁、美しい千代紙の柄、そして、日本人の”もったいない精神”のメッセージも込めて使わせてもらえないかと思い、不要となった吹き流しの有無を町内会や商店街に問い合わせてもらったりしたのですが

前年、七夕祭りの最終日は降雨があったため、状態が悪く破棄されたところが多く、念願叶わず・・・

(頭を抱えていた私に手を差し伸べて下さり、前述の紙が私のもとに。。。)


さて、6月の一日、有志メンバーに集まっていただいた一室で、講師に”ながさわゆうこ”さんをお招きした「”和綴じ”教室」を開催。

心よく手伝いに集まって下さった皆さんには、本当に感謝!!

もともと不器用な私・・・今日の教えは、これから協力者の皆さんに伝授していかなくてはならないので、真剣にやってみるものの、早々に手順が追いつかない状況に陥ります。


ところが・・・「手練れ」と見込んでお手伝いをお願いした2名は予想通り!(偉そうに、ごめんなさい)

たった1回、ながさわさんの手元を見て、自分で1冊作ると瞬時にマスター。

その後は、他の人に教えてくれたり、手技能力や理解度に合わせて作業分担の指示を出してくれたりと、あっと言う間に一番弟子に昇格。


着なくなった洋服をばらして自分のスカートを作ったり、刺繍やアクセサリー作りも、お手のものである友人。

お子さんが履けなくなったジーンズをリメイクしてバックを作ったり、コロナ禍にはマスクを作ってプレゼントしてくれたりとクラフトマンであった同僚。

器用な人って、それはそれは所作も美しく、流れるような手際だったため、制作の様子を動画におさめたくらいです。


黙々と静かに過ぎた3時間。この日だけで150冊以上が完成しました。

試作品は、糸で綴じる方法だったけど、もっと簡単にできるように、ながさわさんが”こより”の使用を提案して下さったことで、作業効率が劇的にアップ👆

また、1冊に使う”こより”は2分の1本という低コスト、かつ、持ち帰りのために分けるのも楽ちん。


実は、一番むずかしかった作業が、紙を裁断する作業。

ながさわさん曰く、「だから、紙は小さくなるほど高くなるんです」

この言葉の意味を痛感するほど、大判サイズから表紙サイズまで切り出すのは至難の業でした。

でも、この日、一番弟子2名の活躍により、ながさわさんには裁断作業に従事していただけたことが、後々まで良い影響をもたらしてくれました。


その後、国際会議事務局(研究室)の秘書さんにもお手伝いいただいたりして、着々と進めていき、予定していた時期より1か月も早く必要数が完成しました。

焦らずにいられたのは、有志メンバーのお力添えのお蔭であったことは間違いないのですが・・・日常の合間に、一つの作業に集中する時間は、心に良い作用があったと言って下さりました。

ものづくり初心者の私にとって、それぞれ”パーツ”だったものが、手を動かしていくと、一つの”もの”として形づくられるという感覚は楽しかったです。


”和綴じ”の「本」にこだわった理由が、もう一つあります。

「本」を手に取り、最後のページを見ると「製本所」の記載があります。

この”和綴じ”は「製本”者”」として、この欄に、手間ではありますが、お名前を残してもらいました。

1冊1冊が、人の手で本として生まれ、また、別の人の手に渡ったもの。

海を渡った説明書、また別の人が手に取ってくれたら嬉しいな、と思います。

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