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国際会議参加者への記念品製作プロジェクト4 ~手すき和紙巾着~

2023/11/26

いつも何かとお世話になっている手すき和紙工房「潮紙(うしおがみ)」の塚原英男さんのところにお邪魔しました。

雄勝石のペーパーウエイト&ペン立て、説明書を入れるための手すき和紙製巾着を作るための和紙を漉いている様子を撮影させていただいきました。

和紙でラッピングする・・・包むのか、箱的なものにするのか、考えあぐねていたところ、塚原さんから「巾着はどうか?」という一言。

その後、提案したご本人が一番、大変なことになってしまうわけですが・・・


和紙を漉くには、植物の繊維を取り出すために”楮”の栽培からはじまり、膨大な手間暇がかかる下拵えを経た貴重な材料を使います。



漉き上がった和紙から、用途のための大きさを確保しつつ、いかなる無駄も出さないよう、きっかり巾着2つ分が取れるサイズが決定しました。


「巾着にする」ということは、ミシンがけする縫製作業がともない、巾着は紐で絞るので破損しないように、和紙から小物や紙衣(かみこ)を作るための、”紙子”加工にすることが必須です。

紙子紙は、漉いた和紙を乾燥させてから、両面に「こんにゃく糊(※こんにゃくの原料となる粉を溶いたもの)」を塗布&乾燥すること2回。

さらに、それを水酸化カルシウムで煮ることで「紙の中にこんにゃくを作る」ということ・・・らしい。

さらに揉んで柔らかくすることで縫製が可能となります。

そんな説明を聞いている間に、塚原さんが物干し竿から乾いた和紙を取り、家の中を勢いよく流れる水路にかがみ込むと


水でザブザブっと振り洗い


手でギュ~ッと絞り


無造作に広げて


最後に端を持って空中でパンパンっと広げているのを見ると、ホントに”布巾”でも洗っているみたい。。。


上の写真は、最初の試作品(1、2号)

グレーの方は、塚原さんが以前、東北工業大学からの依頼で製作経験があったという”雄勝石の粉末”入りのものです。

雄勝石の製品が入るので、統一感もあり良いかと思ったものの、石の粉末のせいでミシンの針がすぐにダメになってしまうことも分かり、また、やっぱり和紙本来(生紙)の風合いを伝えたいということになりました。


試作品3号は、しっとりとした触感の中に厚みと強度も感じる仕上がりで、縫製担当者も量産することに自信がもてるようになったとのことで、いよいよGOサイン。

この頃には、素朴な雰囲気を大事にしつつも、耳をつけようか?とか、巾着紐も江戸打ち紐で思いっきり”和”の色を選ぼう!とか色気も出てきた次第。


工房に「潮紙」ロゴマークのハンコ(消しゴムはんこ)がありました。

秋保在住のご友人である”消しゴムハンコ”作家の方に作ってもらったというもの。


消しゴム側の印面を見ると緻密な手作業が見て取れますが、試しに和紙に押してみると何とも言えない柔らかい印象になります。

手すき和紙であることや潮紙製ということを表面で分かるように帯をつくることにしました。


この帯は試作品として作ったという”栗のイガ”で染めた和紙と端材の和紙を提供いただき、それを使うことに。


こうして、3か月後、無事に巾着が完成、納品となりました。


縫製の方が、お渡ししていた色とりどりの江戸打ち紐から2色づつ、色違いで結べるよう色合わせもして下さり、感激!

その後、中身を入れて、帯を装着して記念品プロジェクトは終了となりました。

職人技には到底及びませんが、出来る限りのハンドメイドに拘ったことで、ほんの少し”ものづくり”の世界を学び、良い経験となりました。

各地の職人さん、創作作家さん、関わって下さった皆さまのお力添えに心から深く感謝を申し上げます。

 

延び延びとなったこの記事を書いている、つい最近のこと。

「和紙を基にした新機能素材」に関心があるという東北大学の研究室の皆さんと、以前、塚原さんの工房にご一緒したことがあり、その際に進んだ機能性和紙の研究成果が論文として国際ジャーナルに掲載されたとご連絡がありました。

https://pubs.aip.org/aip/jap/article/134/16/165001/2918362/Fabrication-of-negative-magnetostrictive-Japanese

いつも突拍子もないお願いや初めての試みに対して、常に前向きに挑戦する心を持ち続けておられる塚原さんへ、謝辞が載っております。

和紙工房に東北大学成田研究室がやってきた~海を渡る?和紙と前掛け~

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